年前のあの日

雑記
02 /15 2006
あらかじめお断りしておきます。
今回の記事の内容は、読む人にとっては辛い内容となるかもしれません。
ご理解のほど、お願いします。


不思議なことで、もう細かな日付は覚えていない。

でも、あの時の状況は何だか鮮明に覚えている。

大学はもう春休みだった。

教習所に通い始めたあたしは、通学のために彼の家に半ば
居候状態で、その日も彼の家に泊まって朝を迎えた。

その朝、携帯がなった。

母からの着信。

当時、あまり両親とうまくいっていなかったため、
あまりよくない知らせということはわかっていたし、
色々言われるもの嫌なので無視しようかとも思った。

まあ、それはよくないよね。
素直に電話に出ましたよ。

「もしもし、どうしたの?」

「いや、お前最近どうしとる?」

「教習所通ったりとか…まだ講師の任用の話も来んよ。」

「そっか…、いやあんまり良くない知らせがあってな…。」


母の口から出たのは、従兄弟の死を告げる内容だった。

そして…それは自殺だったとも聞かされた。


自殺した従兄弟は34歳だった。
たくさんいる従兄弟の中でも、一番のあたしの理解者。

両親との仲違いどころではない、すぐに実家に帰ることにした。


友達にメールした。

「うそ…あんたショック受けてない?」

友達は驚いていた。
でもね、不思議だったのは、その時一番頭の中にあったのは、

「喪服っていくらぐらいなのかな?」 ということ。

バスのチケット取らなきゃ、バイト先に連絡入れなきゃ、

そんなことばっかり。

だって、信じられなかったんだもん。

嘘に決まっている。あの淳ちゃんが?
親が実家に呼び戻すための、たちの悪い冗談だろう。

ありえない。
ありえないのに、何だかわけがわからなくて、そう思うしかなかった。

諸々の事は案外スムーズにすんで、夕方には実家についていた。

そして、すぐにお通夜に向かうことになった。


お通夜で…見てしまったんです。

まだ若い男性の、親しい人の遺体を。

ああ、本当だったんだ。
本当に…死んでしまったのだ。

嘘でしょ… こんな… 

首吊りの自殺の場合、顔の毛細血管が切れてしまうため、
遺体の顔は紫色になるそうです。

彼の顔は、びっくりするぐらい紫でした。

そして、その場で泣き崩れました。
だって、その人と二度と話すことは出来ないんですよ。

お通夜と、お葬式と何度も泣きました。

泣いても、泣いても、悲しみがいやされることなどなく。


遺体を発見したのは、彼の妹でした。
大好きな兄が、自分の家の軒先にぶら下がっているのを見て、
彼女は何を感じたのでしょうか。

夏に、正月に会った時、彼女は笑顔を見せてくれた。

あたしも笑顔でした。

だけど、今はもういない彼のことは、誰も話さなかった。


「がんばって生きよう。生きていればいいことある。」

そんなこと言う人がいるけれど、
彼は十分がんばったんです。
これ以上何をがんばればよかったのでしょうか。

わかるのは、もう彼はいないということ。
そして、死ぬ間際の彼の気持ちなど、理解のしようがないということ。

遺された人間には、どうしようもないやり切れなさがあります。

「あいつはあいつらしく、太く短く、自分の生きたいように生きたんだ。」

母はこう言った。お母さん、本当にそう思ってる?
がんばって割り切ろうとする姿が、あたしにはわかるよ。

割り切ることも、彼を責めることも、あたしには出来ない。


でも、もし叶うのなら。

彼の生きた意味、彼の死の意味を理解したい。

そして、いつの日かそれを誰かに伝えたい。

そうやって、彼を生かすことしかあたしには出来ないから。

その日まで、あたしは死ぬことが出来ないのです。


いつか遠い世界で、彼と再会することが出来るなら、

胸を張って彼と会いたい。

そして、たくさんのことを、彼と語り合いたい。



長々と失礼しました。
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コメント

非公開コメント

この記事を載せることには、かなり躊躇がありました。
身内とはいえ、故人の事をあれこれ書くのは、
死者に対する冒涜ではないのか。
あるいは、同じような立場の人がこの記事を読んだ時、
どのような気分になるかを考えたら、このような場に
載せるべき内容ではないとも思いました。

しかし、一方でこの事件はこの一年間で、
あたしの人生で最も衝撃的だったことでもあり、
自分を振り返る上で、避けては通れないことでもあります。
そして、自分が教育者という職を本当に志した理由でもあるのです。

また、もしこの記事を読んだ人で、
命についてあまり重く受け止めていない人がいるなら、
是非考えて頂きたいと思います。
日常生活で「死ね」「殺すぞ」という言葉を使っていませんか?
「死にたい」という言葉を口にしてはいませんか?

その言葉の持つ意味を考えてください。
そして、軽々しく口にしてよい言葉か考えてください。

そして、本当に死にたいと考えている人はいませんか。
もしそうなら、死ぬ前に誰かに相談してください。
もし周りに相談できる人がいないのなら、
どうか私にメールを下さい。
何も力になれないかもしれません。
でも、お話を聞くことぐらいは出来ます。
2006/02/15 14:48

従兄弟さんのこと本当に残念に思います。
私にも3人の知り合いの自殺者がいます。普通の人では多いような気もします。中でも仲の良かった友達の自殺はショックで一人でワンワン泣いてしまいました。
こちらに来て、その友達からよく手紙が来ました。その中には早く日本に帰ってきて欲しいと、書いてある物もありました。
私は日本に帰らずパリに残っていました。ある日、別の友達から手紙が来て、彼女が高島平のアパートから飛び降りた事が書いてありました。その時、まさかと....
やはり信じられない物があります。
その代わり、どのように苦しくても私はこのような死に方はしないと、心に誓いました。

ゲイ先生も気を落とさないで下さいね。
2006/02/16 3:41

>Miyokoさん
名前が消えていますよ?
一人でももうたくさんだったのに、
3人…何と言っていいのか…。
遺された人間の悔しさ、悲しさは
どうしようもないものがあります。
Miyokoさんも、そのお友達のことを心の中で、
生かし続けていって欲しいです。
あたしも、彼のことをずっと生かし続けていきたいから。
2006/02/16 10:22

和江さん

30代シスジェンダー(?)ゲイ。

日本の片隅にひっそりと暮らしている。
お仕事は福祉系。


マドンナが大好き。


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