あなたには何が見えますか?

シリアス
02 /02 2016
2015年は、色んな意味で同性愛者たちには忘れられない一年になったと思う。
アメリカでの同性婚合憲判断や、渋谷区や世田谷区でのパートナー証明書発行といった(恐らくは)平等な社会への一歩となるニュースが飛び交った一方で、
年末には地位のある人たちが「同性愛は異常」と発言する、厳しい現実を突きつけられるようなニュースもあった。
いずれにせよ、ニュース番組や新聞でLGBT関連の話題を目にする機会はすごく増えた。
当事者の意識はそれぞれで、一連のニュースに対して一喜一憂する人もいれば、一歩引いて冷ややかな視点を持つ人もいた。

これは個人的なことなんだけど、わたし職場の飲み会で、二次会の席でぽろっとカムアウトしちゃったのよね。
若い男の子数名しかいなかったし、いちいち隠すの面倒くさいし。
だいいち「ホゲっぱなし」「歩くカミングアウト」の異名を持つわたしが「男に興味ない、女が好きだ」なんて白々しい。
わたしは白々しいの大嫌いなのよ。
それはともかく、やはり20代の男の子がほとんどの席だったし、あからさまにビックリ仰天したり、拒絶する人はいなかった。
「だいぶ市民権を得てきましたしね~」って言う人もいたわ。
「市民権を得た」って言葉はちょっと、いや相当引っかかるのだけど、若い世代のノンケさんはこういう感覚なのかしらね?って思ったの。
自分の周囲を「世間一般」っていったら怒られちゃいそうだけど、やはりカムアウトしたときの風当たりとか、反応はここ数年変化してきたって感じる。
若い世代になればなるほど、抵抗はないんじゃないかしら?

ただ「市民権を得てきた」といいつつ、わたしたちを取り巻く環境、法制度や公的な補償に関しては何も変わっていないし、
渋谷区や世田谷区、それに追随する自治体が発行する証明書に何の法的な拘束力はない。
携帯キャリアや生命保険の分野でも同性愛者を対称としたサービスが増えてきつつあるけど、例えばパートナーに何かあって、最悪の事態になったとしても病院の集中治療室にはいまだに入れない。
同性結婚式やLGBTビジネスに一喜一憂するのもいいけど、自分たちが本当に何を望んでいるか、欲しているのか当事者も立ち止まって考え直す段階にきてると思う。
実をいうと、LGBTビジネスに関してはわたしついていけない部分もあるのね。
とうとう代理母ビジネスまで始める人まで出てきた。
ゲイのための代理出産と卵子提供セミナー

子ども‥‥ねぇ‥‥。
わたしは子ども好きじゃないし、欲しいとか思わないし、正直代理母の人権が気になるんだけど。
これビジネスにしちゃっていいの?と思ったり。

こういう現状にいまいちついていけないのも、わたしの心が歳をとった証拠かもしれない。
このブログ読み返してみてもわかるけど、わたしは基本的にミーハーで、新しいものは何でも歓迎してきた。
10代のゲイレズビアンなんかは、わたしの世代なんかが想像すら出来なかった人生設計を既に立てているのかもね。
わたしなんかが何か言ったとしても、ババアは引っ込んでろよ!って言われるかもしれないわ。

‥‥というわけではないけれど、わたしが10代の頃、非常にショッキングな事件が起きた。
2000年の2月11日。
一人のゲイ男性が、暴行の末に殺された。

新木場 夢の島殺人事件

詳細は上記のリンクを参照して欲しい。
新木場夢の島公園は野外ハッテン場(相手を見つけ、セックスをする)として知られていた。
被害者Sさん(当時33歳)がそこを訪れ、「ホモ狩り」と称してゲイから金品を巻き上げる少年グループに暴行され、殺された。
少年たちは、「ホモは警察に届けない」という理由でゲイの男性たちをターゲットにしていた。
実際に届け出ず、金品をとられたり暴行される被害者はたくさんいたそうだ。

野外でセックスにおよぶということに対して、不快な顔をする人もいるだろうけど、昔は夜の公園といえばゲイに限らずカップルご用達だったという。
特にゲイにとっては出会いのツールも今ほど発達していなかった時代だ。
いずれにせよ恐喝されたり、暴力をふるわれるいわれなんかない。
何より被害にあったゲイが警察に届けなかったのは、野外でセックスすることの後ろめたさからではなく、ゲイであることがバレるのが怖かったからだ。
多くのゲイにとっては、絶対に知られてはいけない秘密だったのだ。

16年前の事件。
最近の出来事ととらえるか、昔のことと感じるかは年齢によると思うけど、被害にあった人たちにとってはいまだに生々しい記憶だと思う。
亡くなったSさんは33歳。
今のわたしと同じ年齢だ。
わたしがこの事件のことを知ったのは2001年だったのだけど、正直あまりSさんに共感できない部分もあった。
お互いのことをよく知らないのに、出会ってすぐにセックスしたがるゲイの慣習にまだ馴染めてなかったし、野外ハッテンなんかするからでしょ‥‥?という気持ちもあった。
それからいくつか恋もしたし、刹那的なセックスもたくさん経験して、今彼と同じ年齢になり、いつの間にか共感する部分が多くなった。
辛かったでしょう。
声が届くのなら、彼に伝えたい。
暴行されて死んだこともだけれど、彼が抱えていた抑圧の日々に対して、そう思うのだ。
ご存命なら50歳手前になっているだろう。
掲示板やアプリを利用して性生活を楽しんでいたかもしれない。
あるいはパートナーに恵まれていたかもしれない。
今でも野外ハッテンを楽しんでいたのかもしれない。
それらの可能性は全て摘み取られてしまったのだけど。

Sさん、あなたには何が見えますか?
2016年はどんな時代に見えますか?

問いかけても答えは返ってくるはずもない。
彼が背負っていた、ゲイであることの重みは過去のものなのだろうか?
レインボーフラッグがはためく今の時代だからこそ、考えるべきことはたくさんあると思う。
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和江さん

30代シスジェンダー(?)ゲイ。

日本の片隅にひっそりと暮らしている。
お仕事は福祉系。


マドンナが大好き。


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