ジャニーズの逮捕と、穂積由香里さん

雑記
12 /13 2009
元ジャニーズジュニアの少年たちが、窃盗で逮捕されたらしい。
このニュース記事に関するmixi日記を読んでいると、「顔写真と実名曝せ」という意見が非常に多いのだが、
いくら犯罪者とはいっても、この子たちは少年法で保護されている少年だ。
彼らが自主的に実名曝して記者会見でもするならまだしも、メディアや元所属事務所が
本人に無断で実名や顔写真を公表するなんて違法行為だ。
少年法に関しては、わたしも色々と思うところはあるけれど、
だからといって平気で法律違反をすればいいってもんじゃない。
むしろ、メディアが勝手に少年の個人情報を暴き立てたら訴訟起こされるよ。
さも正論ぶって、違法行為を煽り立てるのは問題だと思う。

「少年法」や「プライバシー権」で、ふと思いついたのが俳優の穂積隆信の娘で元女優の穂積由香里さんだ。
彼女は有名な「積み木くずし」のモデル(というより主人公?)で、2003年に35歳の若さで亡くなった。

数年前に安達祐美主演でドラマにもなっていたから、知っている人もいるかもしれないけど
彼女は中学生時代に非行に走り、両親と激しい葛藤の末に更生した。
父親の穂積隆信は彼女が非行少女になり、更生するまでの過程を詳しく書いた著書「積み木くずし」を発表し、
本は300万部のベストセラーになり、ドラマや映画にもなった。
ドラマの視聴率は40%以上を記録し、穂積隆信や妻は少年問題に関する講演会に引っ張りだこだったという。

皮肉なことに、彼女はそのことで世間から注目を集めてしまった。
本でもドラマでも、彼女の非行の事実(家庭内暴力や窃盗、傷害)がかなりリアルに書かれている。
特に、母親に対する家庭内暴力のシーンはかなり注目を集めてしまい、彼女はバッシングに曝されることになった。
おまけに、両親とも講演活動などで多忙になり、一人になった彼女は再び非行に走ってしまう。
彼女はブームのあとに覚醒剤取締法などで逮捕され、穂積隆信はバッシングに遭い、夫婦も離婚した。
由香里さんが非行に走ってからは、本当に家族一丸で非行に取組んでいたのだろうけど、
本を出してブームになったことで、家族は結局崩壊してしまった。
母親は後に自殺し、由香里さん本人も35歳の若さで心不全で亡くなってしまう。
遺体は死後5日経つまで発見されなかった。

わたしは高校生の頃、「積み木くずし」が図書館にあったので読んだことがあるのだけど
本の中で由香里さんのプライバシーに関する配慮はまったくされていないように思った。
いくら有名人の娘とはいっても、由香里さんは当時まだ中学生の女の子だ。
シンナー吸引や家庭内暴力の事実を、実名で書かれて問題視されなかったのか疑問だ。
本人が成人した後に、本人の承諾を得て公表されるならまだわかる。
やっと立ち直りかけた矢先に本を出すのは、いくら当時とはいえおかしいと思わなかったのだろうか。
仮に本を出すことに由香里さんが同意していたとしても、中学生では本にどれだけの
影響力があるのかはわからないだろうし、その結果自分の人生がどうなるかなんて
想像もつかなかったに違いない。

穂積隆信は、由香里さんが逮捕されたあとも、何回も彼女に関する本を出している。
彼女が16歳で逮捕されたときには、積み木くずしの続編として本を書いた。
そう考えたら、彼女は未成年で逮捕されて実名報道がされた数少ない例だといえる。
(ニュースや新聞では、さすがに名前が伏せられていたのかもしれないけど)

彼は2003年に彼女が亡くなったときですら、そのことをネタに本を書いていた。
当時わたしは書店でこの本を見かけたのだが、「『積み木くずし』には書かれなかった真相!」
みたいな文言がおびについていたように記憶している。

穂積隆信が、自分自身のプライバシーを勝手に公表するのはかまわない。
しかし、由香里さんのプライバシーを世間に曝しつづけ、彼女を辛い目に遭わせたことははたして許されるのか。
「積み木くずし」がなかったら、彼女は順調に更生し、楽しい人生を歩んでいたかもしれない。
家族にも恵まれ、孤独な死をさけることも出来たかもしれない。
死後もなお、由香里さんのことをネタにして本を出し、印税を得た。
もしかしたら、彼女が必死に生きていた姿をみんなにわかって欲しいという気持ちから
本を出したのかもしれないけれど、亡くなったあとぐらいそっとしておいてあげればいいのに・・・・と、
どうしても思ってしまう。

プライバシーを切り売りして、それで稼いでいる芸能人はたくさんいる。
他人のプライバシーを暴き立てる人もいるけれど、そういう人は批判的な目で見られることも多い。
家族の場合はどうなのか?自分の子どもなら、プライバシーを売り物にしてもいいのか?
「積み木くずし」の時代は少年非行が大きな社会問題になっていたので、
本が社会に与えた影響は、悪いものだけではなかったと思う。
ただ、主人公である由香里さんの人生にとっては、決していいものではなかったはずだ。

凶悪な少年事件が起きると、「顔と実名を曝せ」という声が必ずあがる。
わたし自身、少年法なんてなくしちゃえって思うこともあるし、事件によっては
実名報道が必要ではないかって思うこともある。
ただ、実名報道や顔写真の公表によるプライバシーの破壊が、罪を犯した人の
更生を阻害することもあるということもまた、事実だ。
特に、それが少年少女だった場合影響ははかりしれない。
結果的に、大人になってから再犯したのでは刑罰の意味もなくなってしまう。

よく、「被害者の実名や顔写真は公表されるのに、少年だからといって加害者の
プライバシーを保護するのはおかしい」なんて意見もあるけれど、これは変な意見だ。
本来なら「被害者のプライバシーを守れ」というのが筋ではないか。

死刑の問題同様、このことはわたしを悩ませる問題の一つだ。
なかなか答えを出せないから、考えるのを躊躇してしまう。
だからこそ、感情的な議論は避けないといけないし、感情をおさえる努力も必要だ。
まあ、感情を逆なでしたり、感情を煽り立てるニュース日記に書き込むのも
本当はあまりいいことじゃないんだけどね。
そんなことをいいながら、どうしても書いてしまうのだけれど。

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コメント

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「積み木崩し」は、発売された当時、母親が買って読んでいました。
あたしもドラマになったとき観ていました。
今から思うと、現在進行形の家族の姿だったんですよね。
kazucchinさんの記事で改めて気付いたんですが。。
当時、中学生のあたしも家庭内暴力をしていたんで、他人事じゃない彼女の孤独に共感していた記憶があります。
が、やっぱしその後の穂積氏には不信感を覚えてしまいますね。。
彼女になにかあれば本に書く。これは何だか滑稽な気がします。
生きている、葛藤している娘と真正面から向き合うのを避けているんじゃないか。
本を書く労力を使ってる時間があるなら、目の前の娘を抱きしめてやれよ、と思います。
その逃げ方が、あたしの父親と似てる感じがします。
kazucchinさんの仰る”彼女が必死に生きていた姿をみんなにわかって欲しいという気持ちから”
っていうのも確かにあるでしょうが、
本心は”大変な娘を持つ、父親の苦悩をみんなに知って欲しい”って気持ちのほうが強いような・・。
すっごい穿った見方で、自分が嫌になりますが><

いつもkazucchinさんの物事を捉える視点とか、参考になります。
今日の記事も、たくさん思う事がありました。

みぃさんへ

わたしはリアルタイムでは見たことないのですが、なるほど
当時を知る人の意見がきけてうれしいです。
たしかに、何だか「逃げ」を感じますね。
続編というか、「積み木くずし」の読者からの手紙対する返信的な「愛を積む」という
本も読んだんですが、この本を読んで救われた読者はたくさんいるようです。
それだけに、その後の穂積一家を見て失望した人も多かったんでしょうね。
穂積氏も今はかなりの高齢で、愛する人を全て失ってどんな心境なんでしょうか。
由香里さんの棺の中に、「積み木くずし」を三冊入れたといいます。
はたして由香里さんは喜んでいるのだろうか・・・・。

和江さん

30代シスジェンダー(?)ゲイ。

日本の片隅にひっそりと暮らしている。
お仕事は福祉系。


マドンナが大好き。


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